2020年5月 – ページ 2 – JUiCANDSEA

疋田桂一郎の文章

疋田桂一郎氏はジャーナリストで朝日新聞のコラム、
「天声人語」でおなじみだった名筆家のひとりである。
彼の文章は深代惇郎氏と並んで大変読みやすくかつ品があり
大学新聞社のサークルに所属していた時分、
何度も彼らの文章を写経して学んだ。
特に疋田氏の『新・人国記』の「青森県」は名文で
まだ読んだことのない方にはぜひ一読してほしい文章だ。
せっかくなのでここで頭出しを紹介しておこう。

雪の道を角巻きの影がふたつ。
「どサ」「ゆサ」
出会いがしらに暗号のような短い会話だ。
それで用は足り、女たちは急ぐ。
みちのくの方言は、ひとつは冬の厳しさに由来するという。
心も表情もくちびるまで
こわばって「あららどちらまで」が「どサ」「ちょっとお湯へ」が「ゆサ」。ぺらぺら、 
くちばしだけを操る漫才みたいなのは、何よりも苦手だ。

こぎみよい文章のリズムと情景が広がる表現、適度な漢字とひらがなのバランスと体言止め。
いまでも彼の天声人語時代の文章は好きで
何度も読んでは自分のフレームワークになるようにしている。

日本語の作文技術

朝日文庫
本多勝一著

ジャーナリスト、本多勝一氏の名著。
学生時代、大学新聞で記事を書いていたときに非常に役にたった実践の書。
いま再読しておもうのは文章表現が時代を経たためか、
いささか古いように感じること。
当時の左翼全盛期の青臭い匂いは多少するが
それはそれとして。味わいというもの。
この本はジャーナリストらしい、わかりやすい、伝わりやすい文章とは
どうすればかけるのかを、順をおって説明している。
構成の立て方、たとえば修飾の順番、助詞の使い方など、
著者が理系出身なだけあって
文章を分解して理解しやすいようにしている。
漢字と仮名のバランス、リズムなどはこの著書で知って
それ以来気にしている。
デザイン的にもここは漢字にした方がビジュアル的に
きれいだとか、リズムがいいとか、
文末には漢字をつかわないとか(して下さい → してください)。
レビューをみると自己主張しすぎなどの批判はあるものの
そこは割愛して読み飛ばせばいいので
活用できるところは活用したほうがいいのではとおもう。

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