毎日何気なく使う眼鏡クリーナー。
ある日、別の製品を使ったとき、レンズの隅に残るわずかな水滴に違和感を覚えた。
調べてみると、お馴染みの小林製薬の製品には「イソプロピルアルコール(IPA)」、他社製には「エタノール」が使われていた。
どちらも石油の「ナフサ」から生まれる兄弟のような存在だが、その性質は大きく違う。
IPAは安価で油汚れに強い反面、毒性や揮発性が高く、扱いが難しい素材だ。
しかし日本の高い技術は、完璧な気密性を持つ個包装によって液の乾燥を防ぎ、拭き跡を残さない極上の快適さへと昇華させていた。
見えない部分に投資を惜しまない「日本クオリティ」の真髄がそこにある。
ここでふと思う。
「原材料が安いIPAなのに、なぜ他社より高いのか。どうせ広告宣伝費のせいだろう」という先入観を少し抑えて、自分の頭で調べ直してみる。
すると、安価な素材の短所を高度なパッケージ技術で補うという、知らなかったメーカーの真摯なものづくりの思いに辿り着いた。
しかし同時に、私たちはこれほど緻密な技術の価値を、あまりにも「安く」手放しすぎてはこなかっただろうか。
「良いものをどこまでも安く提供する」というかつての美学は、今や日本経済を縛る呪縛となり、現場の豊かさを阻む原因になっている。
物売りから「体験の提供」へ。
この埋もれた価値を魅力的なストーリーとして伝えた方が人はその体験とおもいを共有し、いい方向に流れるような気がする。

