従来の原価計算は、1920年代の現実に即した仕組みのままである。
そのため、基本的には「生産時点のコスト」しか把握できないという大きな課題を抱えている。
1920年代当時は、原材料を除く総コストのうち、肉体労働者による直接労務費が80%も占めていた。
しかし現代では、直接労務費がこれほどの割合を占める業界は一部を除いて一般的ではない。
つまり、従来の原価計算のやり方は現代の実情に全く合っていないのだ。
たとえば、飲食店で売れ残って廃棄される商品の費用を考えてみよう。
これは通常の原価計算には含まれない。
しかし実態として、飲食店では「完売」よりも「一定の廃棄」を前提とする方が現実的である。
そうであれば、予想される廃棄分の費用はあらかじめ原価に見込んでおくべきだと言える。
ビジネスモデルが大きく変化している以上、原価計算の手法も変えなければ正しいコスト把握は不可能である。
京セラ創業者の稲盛和夫氏も、こうした実態を踏まえた独自の原価管理を行い、
経営を正しくコントロールしていたと著書に記している(「アメーバ経営(時間当り採算制度)」)。
既存の枠組みを疑い、ビジネスの実態に即してコストを捉え直す洞察力。
これこそが、現代の経営者に求められている本質ではないだろうか。